古墳時代中期末(5世紀末頃)の岡山県
勝負砂古墳、京都府穀塚古墳、愛知県志段味
大塚古墳、栃木県助戸十二天塚古墳・
雀宮牛塚古墳といった前方後円墳をはじめとする全
国の有力首長墓から出土しており、ヤマト政
権との政治的な関係を表すものとして配布さ
れたと考えられます。
鈴杏葉は鋳銅製で、馬の尻を飾る鈴の付いた装飾=尻繋を構成するものです。
本墓では3点出土しており、これを吊した革ベルトも良好に遺り、環状雲珠を介して馬の尻
にさげた状況が判明しました。また、2点に破損と修復の痕跡がみられ、また環状雲珠に繋を留めるのにも金具を寄せ集めて使っており、
重宝して長期間大切に保有されたことがうかがえます。
【 構 造 】
五鈴杏葉:鋳造製、高さ11cm、幅8.5cm。鈴の中には丸と呼ぶ小石を入れて音を鳴らす。
環状雲珠:鉄製、直径7.6cm、環幅8mm。この金具に8本の革ベルトを結び、馬の尻に装着する。
鉄地金銅製(鉄板を金メッキした銅板で装飾したもの)で、馬の繋がい(革ベルト)を留め
る半球形の金具である。辻金具では内面に革製の繋が良好に遺り、この馬具の構造・使用法
が明らかになった。ただし、「雲珠」は繋が確認できておらず、本当に雲珠としての機能を果
たすのかまだ要検討。
無脚雲珠・辻金具では、花形の装飾文をもつ例は知られているが、鋸歯状文(三角の連続
文)はこれまでに類例がない。また鉢に段があり、2段になっているのも類例のない特徴である。
型式が定まっていない初期の資料に位置付けられる。無脚雲珠・辻金具は6世紀前半に出現する
タイプの馬具であるが、139号出土例はその出現期の資料で、ヤマト政権からの配布品と考
えられる。
【 構 造 】
無脚雲珠:鉄地金銅製、直径11.3cm、高さ3.1cm。
無脚辻金具:鉄地金銅製、直径9.7cm、高さ2.6cm。