島内139 号地下式横穴墓の馬具

2セットの馬具:面繋と尻繋×2

人間がウマを効率よく制御(扶助)するためにウマに装着させる色々な道具
馬具
馬具

五鈴杏葉ごれいぎょうよう環状雲珠かんじょううず

 古墳時代中期末(5世紀末頃)の岡山県 勝負砂古墳しょうぶざここふん、京都府穀塚こくづか古墳、愛知県志段味しだみ 大塚古墳、栃木県助戸すけど十二天塚古墳・ 雀宮すずめのみや牛塚うしづか古墳といった前方後円墳をはじめとする全 国の有力首長墓から出土しており、ヤマト政 権との政治的な関係を表すものとして配布さ れたと考えられます。
 鈴杏葉は鋳銅製で、馬の尻を飾る鈴の付いた装飾=尻繋しりがいを構成するものです。
 本墓では3点出土しており、これを吊した革ベルトも良好に遺り、環状雲珠を介して馬の尻 にさげた状況が判明しました。また、2点に破損と修復の痕跡がみられ、また環状雲珠に繋を留めるのにも金具を寄せ集めて使っており、 重宝して長期間大切に保有されたことがうかがえます。
 【 構 造 】
五鈴杏葉:鋳造製、高さ11cm、幅8.5cm。鈴の中にはがんと呼ぶ小石を入れて音を鳴らす。
環状雲珠:鉄製、直径7.6cm、環幅8mm。この金具に8本の革ベルトを結び、馬の尻に装着する。

無脚雲珠むきゃくうず辻金具つじかなぐ

 鉄地金銅製(鉄板を金メッキした銅板で装飾したもの)で、馬の繋がい(革ベルト)を留め る半球形の金具である。辻金具では内面に革製の繋が良好に遺り、この馬具の構造・使用法 が明らかになった。ただし、「雲珠」は繋が確認できておらず、本当に雲珠としての機能を果 たすのかまだ要検討。
 無脚雲珠・辻金具では、花形の装飾文をもつ例は知られているが、鋸歯状文(三角の連続  文)はこれまでに類例がない。また鉢に段があり、2段になっているのも類例のない特徴である。 型式が定まっていない初期の資料に位置付けられる。無脚雲珠・辻金具は6世紀前半に出現する タイプの馬具であるが、139号出土例はその出現期の資料で、ヤマト政権からの配布品と考 えられる。
 【 構 造 】
無脚雲珠:鉄地金銅製、直径11.3cm、高さ3.1cm。   
無脚辻金具:鉄地金銅製、直径9.7cm、高さ2.6cm。

鹿児島大学総合研究博物館 橋本達也教授 講演会より
ページのトップへ戻る